地平の意義

「ハゲタカ」スピンアウト・ノヴェル


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Deal 4

 会場中が、鷲津の登場に息を呑んでいた。
 その空気に、鷲津もはた、と我に返る。青ざめる、村田と
リンが見えた。
 いよいよ周囲が、ひそひそざわざわと騒ぎ始める。しかしそ
の時、計ったように照明が落とされた。
 会場中の戸惑いをよそに、照明は、間接的で幻想的なものに
切り替わる。同時にステージ上の黒田にライトが当てられた。
「本日はようこそおいで下さいました、クリスタルネット社長
の黒田です。クリスタルクリスマスパーティナイト、お楽しみ
戴けていますでしょうか? 皆様が、聖夜に良き友を見つけら
れたなら、この上なく幸せでございます。引き続き『仲良く』
お楽しみ戴きたいのですが…」
 黒田が僅かに言葉を切ると、次の瞬間、三島にもスポットが
当たった。
「!?」
「どうも一部では、そう出来そうもありませんね?」
 黒田は壇上を降りると、三島の前までやって来た。にこり、
と一つ笑って、口を開く。
「主催者側として、パーティ内でのもめ事は好ましくないから
ね。」
「あッ 私は…!」
「君が悪くないのは重々承知だよ。だから、私と少しお茶でも
飲まないかい、って言おうとしたんだけど。」
「…!…」
 含みのある笑顔は、何処まで信用出来るのか分らなかったが。
「わ、分りました…じゃあ…」
 こんなチャンスは滅多にない。ホライズンの事も、クリスタ
ルネット自体の事も…彼に聞きたい事は山程ある!! これで
大きな情報を仕入れれば、次に鷲津に会った時も、門前払いを
食らう事はないッッ!!
 出された手を三島が取ると、黒田はまた、にこりと笑った。
「それでは皆様も、引き続きお楽しみ下さい! 私にも素敵な
お茶の相手が出来ましたので、そろそろ失礼致します。」
 幾らかの笑いを取りながら、黒田は三島を連れ、会場から出
て行った。

二人が出て行った扉を見ながら、いまだ幻灯機の様な照明の中
で、鷲津は、己が放心している心理に、顔の筋肉が引き攣る事
自体に、納得が出来なかった。
 やられたねー、と隣で間がケラケラと笑った。
「えーと、ほら、確かこういうのって……ぎゃふのり?」
 
 ぎゃふって何だッ!!?

 思ったが、鷲津はただ息を吐いただけだった。







posted by Team Novelize”HAGETAKA” 21:27 |-|-|pookmark