地平の意義

「ハゲタカ」スピンアウト・ノヴェル


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Deal 1

 2001年


 それは、いつも通りのディール、だった。
「クリスタルネットは創業35年、前社長の黒田吉兼氏が43
歳の時に立ち上げ、昨今の結婚情報サービス業のひな形を築き
ました。しかし、三年前に吉兼氏は死去。経営権が息子である
専務の吉成氏に移行後は赤字が続き、右肩下がりの状況です。

「前任の副社長はどうした?」
「副社長は前社長時から変わらず、本木三郎。遺言には彼を社
長にするようにあったそうですが、慎み深いと言えば良いのか
、これを辞退。今に至ります。」
「成程な…」
「この業種は、この先の日本で大きな利益を出す事は間違いあ
りません。」
「良し…買い漁れ!!」
 会議が終わり、人が散ると、鷲津は考えるように外を見た。
背後に来た中延に、ふと、問いかける。
「創業時は女性の社会進出が活発になり始めた時期です。吉兼
氏は、いずれ来る晩婚化を予期していた。そして、それに合わ
せて事業を行った…。生きているうちに成果が見れるかどうか
も分らない、長いスパンの事業を、彼は、何故選んだんでしょ
うか…?」

 それは、まるで自問しているようだった。



 中延は軽く笑うと「私はわかる気がします」と答えた。
「それは、自分の為ではないからでしょう。家族や子供、大切
な誰かの為…。しかし、働く事や金に振り回されるうち、本当
にしたかったことを見失う事も多い…」
 じっと聞いている鷲津に、中延は返すように問いかけた。

「あなたは、誰の為に働いているのですか?」







posted by Team Novelize”HAGETAKA” 22:09comments(0)trackbacks(0)pookmark


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